仕事での悩みは、誰しも一度は直面するものです。
結果が出ない焦り、人間関係のストレス、自分のキャリアへの迷い――その答えを求めて、時に立ち止まりたくなることもあるでしょう。そんなときに役立つのが、長い歴史の中で培われた東洋哲学の考え方です。本記事では、東洋思想が教える心の持ち方を、現代の働き方にどう生かせるかを解説します。日々の悩みを少しでも軽くし、心に余裕を持ちながら前進するためのヒントを見つけてみませんか?
・仕事で悩みを抱えている方
・うまく悩みを消化できない方
・哲学に興味がある方
東洋哲学とは
東洋哲学は、中国やインド、日本など東アジアや南アジアで発展した哲学思想を指します。代表的なものに、孔子や孟子の教えを基にした儒教、老子と荘子による道教、そしてインドで生まれた仏教があります。
これらの思想は、自然との調和や人間関係の在り方、自己の内面を深く見つめることを重視します。例えば、儒教は倫理や道徳に基づいた社会の秩序を説き、道教は自然に身を任せる「無為自然」の生き方を推奨します。仏教は「苦しみ」の原因を探り、執着からの解放を目指します。これらは現代の生活においても、ストレスや迷いを軽減し、心の平穏を保つための知恵として活用されています。
西洋哲学との違い
東洋哲学と西洋哲学の大きな違いは、その焦点とアプローチにあります。
東洋哲学は、自然との調和や内面的な悟りを重視し、全体的・直感的な視点から生き方を探求します。一方、西洋哲学は、論理的・分析的思考を重視し、真理や知識の探求を通じて物事を体系化する傾向があります。また、西洋哲学は個人の自由や理性に焦点を当てる一方で、東洋哲学は共同体や自然との関係性を重視するのが特徴です。これらの違いは、文化や歴史的背景に根ざした価値観の違いを反映しています。
東洋哲学で悩みを軽くする
参考になる4つの教え
- 無我
- 空
- 他力
- 密教
東洋哲学は基本的に「いかに生きるべきか」を考え、答えもしっかり提示してくれています。中には屁理屈やん・・・と思うものもありますが、それぞれの偉人たちが悩み悟り行き着いた境地は「楽になる」ということです。
生きていく上で悩みが全くないなんてことはあり得ませんが、上記の考え方を学ぶことで少しでも楽になれれば幸いです。
ブッダの教え 無我
ブッダって?
まずはこの方「ブッダ」。
ブッダで検索すると神様っぽい画像がたくさん出てきますが、今から約2500年くらい前に存在した「人間」です。

このブッダ、なんと実は「王子」だったそうです。
非常に恵まれた家庭に生まれましたが、虚無感に悩まされ続け出家してしまいます。

この人生に意味はあるのか・・・?

本当の自分て何だろう・・・?

!、そうだ・・・出家しよう。
ざっくりいうとこんな感じで自分探しの旅に出ます。
そして激しい修行・苦行の末たどり着いた答えが
「無我」 自分とかない
どういうことか分かりませんよね、哲学っぽくなってきましたね。
無我とは
例えば今日あなたは鶏の唐揚げを食べたとしましょう。鶏の唐揚げは言い換えれば「鶏のからだ」であり、それを食べたあなたの体は「鶏のからだ」でできています。
そして食べた鶏も虫や草を食べており、鶏のからだは虫や草のからだでできています。つまりどういうことか。
あなたは「あなた以外のもの」からできている!
この世界は全てが繋がっており自分というものがない、つまり無我ということなんです。
悩みの原因は「自分」
なぜか。この世界は目まぐるしく変化しており、そんな中で変わらない「自分」を作ることは無いものを作ろうとすることで苦しいはずです。
例えば「仕事をできる自分」を作りたいけど、そもそも自分なんてないから作れない、なんで作れないんだろうと悩む・・・という感じでしょうか。

自分を捨てることが最高に気持ちいいぜ!
らしい。そしてこの最高に気持ちいい(最上の安楽)の境地を
ニルヴァーナ(涅槃:ねはん)とした。
龍樹の教え 空(くう)
龍樹って?
龍樹という名前を聞いたことがある人はほとんどいないのではないしょうか。
ネットで画像検索してほとんどヒットしませんでした。
この龍樹は「人間」でインド人です。
ブッダの死後、仏教は非常に複雑な教えとなってしまい「阿毘達磨大毘婆沙論(あびだつま だいびばしゃろん)」という全200巻ある本にまとめられました。
そしてこんな訳の分からないまとめられ方をしたブッダの教えを超シンプルにまとめたのが龍樹です。
この龍樹は200巻ある本を、わずか一文字でまとめてしまいました。それが
「空(くう)」である。
この世界はすべて「空」
ブッダは「自分がない」と悟り、龍樹はその教えから「すべては空」と悟りました。
この世界はすべて「空」であり、「空」は分かりやすく解釈すると「フィクション」となる。
例えば「ミッキーマウス」は存在するだろうか?
ディズニーランドに行けば会えるし、画面の向こうには存在する、しかし実際には存在しない、この決めきれない状況こそ「空」なのです。
また龍樹は「言葉による虚構」を説いている。どういうことか。
この世界は言葉の虚構
この世界は「言葉の虚構」による「幻」であり「フィクション」である。
例えば、「兄」と「弟」はどちらが先に生まれたでしょう?
普通に考えたら「兄」が先に生まれたはずです。しかし「弟」が存在するから「兄」が存在するのです。一人っ子なのに「俺、兄なんだよね」という人はいないでしょう。
なので「兄」と「弟」は「同時に生まれた」、となる。
会社も同じです。会社もフィクションです。
「社員」が存在するから「社長」が存在し、「部下」がいるから「上司」が存在するのです。
こう考えると言葉の虚構で世界は支配されており、言葉が見せる「幻」であると解釈できる。つまり「フィクション」なんだと。
あなたを言葉で表現することはできないのだ。
すべては繋がっている
この世界は「幻」であり「空」だと考えると、どんな境地に辿り着くのでしょう。
「幻」とは目に見えないものが存在することであり、実際には存在しない。では世界が「幻=実際は存在しない」となるとどうなるのか、答えは「すべてが繋がる」です。
「すべてが繋がる」とはどういうことか。
例えば、ブッダの項で「あなたは鶏のからだ」であり「鶏のからだは虫や草」だと紹介しました。ここから更に掘り下げると
「虫や草は山」であり、「山は木から成る」である
「木は雨で成長」し「雨は空から降る」でとなり
「あなたは空」である、となりすべては繋がり境界線は無くなってしまうのです。
つまり「宇宙」であると。
悩みは幻である
龍樹は「自分の変わらない本質があるとか考えている奴は愚か」と説いている。
例えば、「大きい」「小さい」を考えた時に「あなたは子供に比べれば大きいが、クマと比べれば小さい」となる。「〇〇さんと比べたら仕事ができないが、△△さんと比べたら仕事ができる」となり、どの場面によるかで「あなた」の存在は変化します。
また、「あなたは才能がない=仕事ができない」は成立しない。
あなたが「才能がない」のは相手がいて成立し場面によって変化するため「仕事ができない」という結論が導き出せない。
少し強引ではあるが、このように考えると
すべての悩みは成立しない、だから大丈夫!と言える。
龍樹はすべては「空(フィクション)」であり、すべては繋がっていると教えてくれた。
悩みや自分さえも「空」という一言で片付けてしまったようです。
親鸞の教え 他力
親鸞って?
学校の教科書にも出てくる親鸞を知らない人は少ないでしょう。
親鸞は今から約800年前に活躍した「浄土真宗」を作った人です。

他力ってどういう考え方?
親鸞の教えの中の有名な一節、「善人なほもつて往生をとぐ。いはんや悪人をや」というものがあります。
これは「ダメな奴ほど救われる、デキる奴でさえ救われるのだから」という意味です。
そうなの!?と言いたくなる気持ちは分かります。どういうことか。
親鸞は比叡山で20年もの間、厳しい修行を行いましたが悟ることができず、むしろ「修行している自分」に酔い慢心してしまいました。
そうすると、先に紹介した「空」に向かうために「修行している自分」というフィクションに気づいてしまいます。

修行してるワシめっちゃすごくない?
親鸞は当時比叡山のお坊さんで、現代でいうところの「エリート」です。そんな本来デキる男であった親鸞は悟れないダメな自分に気づいてしまいました。そうするとどうなったか。
「空」の方からこっちにやってきた!!
つまり逆転の発想、悟れないことを認めてあげると「空」になる、これが「他力」の哲学。
ただ信じ、認めてあげよう
私たちは悩み苦しむ「フィクション」の中に縛られている。「空」の考え方は分かるけど、そんな簡単に割り切れない、自分はダメなやつなんだ。そう考えてしまいますよね。
でも、そんな時は自分を認めてあげて救いを信じるだけでいいんです。そして手を合わせて「南無阿弥陀仏」と唱える。意味はどうでもいいんです。
親鸞自身もダメ人間ぶりを体現しています。なぜなら親鸞は他力の教えを流布していると逮捕されて新潟へ流罪となっています。また書物の中で自分のダメ人間ぶりを多く書き残しています。

ワシめちゃくちゃダメ人間だけど、信じて救われてる!
ダメ人間こそ救われると信じるだけこれが「他力」の教えなんです。
空海の教え 密教
空海って?
空海とは前の項で紹介した親鸞よりも400年前の人である。

武器持ってる・・・
この「空海」は万能の天才と言われている。こんなエピソードがある。
空海は当時世界一栄えていた唐(中国)に留学し、最先端であった仏教「密教」を青龍寺で学びなんと3ヶ月でマスターしてしまった。この青龍寺は密教において一番のお寺だったらしく、なんとそこのトップに後継者として指名を受けるほど。
今勤めている会社に留学のため入社したケビン君が3ヶ月後に社長に指名されるようなものです。社員はパニックですよね。
密教の教え
あなたが仏教に触れるのはどのような場面でしょうか。多くの人が「お葬式」と感じるはずで、仏教には「死」のイメージがある。
しかし密教では「生きる」ことを大肯定する哲学なんです。
どういうことか。ざっくり言うと「欲」を持って良し!ということである。
例えば
- お金が欲しい
- モテたい
- 出世したい
これら全部持ってていいよ、ということである。

悟りを目指して、慈悲の心で人を救うのを究極とする
そして、それらの欲を持ってて良いけど、お金をたくさん稼いだら人助けもたくさんしようという考え方なんです。著名なお金持ちほど、たくさん寄付をしている事も同じではないでしょうか。
欲の先(悟り)が人助けで、これが最高に気持ちが良い!という考え方だと思います。
まとめ いかに自分に当てはめるか
これまで東洋哲学の教えを4つ紹介しました。
正直「どういうこと??」となるような教えもありましたが、本記事を書く中で東洋哲学面白いなと感じました。
個人的には「親鸞」の教えが一番好きです。
ダメなやつほど救われるんです。今あなたがどのような悩みを抱え、苦しんで「自分」を否定していても救われるんです。そしてそんな自分を認めてあげましょう。
仕事や人間関係で悩んでいたとしても、すべては「空(フィクション)」なんです。
個人的に「空」を感じる瞬間は
①サウナで整っている時
②露天風呂でぼーっとしている時
③コーヒー片方にぼーっとしている時、ですかね。
あなたの「空」を感じる瞬間がきっと楽になれる瞬間になると思います。